藤井翔悟コンサルティングFUJII SHOGO CONSULTING
DX・IT戦略7分で読める

レガシーシステム刷新を「塩漬け」にしないための投資判断 — 経営が握る3つの論点

基幹システムの刷新は、現状維持が一見安く見えるがゆえに先送りされ続けます。2025年の崖を巡る公的データを起点に、刷新を塩漬けにしないために経営が握るべき投資判断の3つの論点を整理します。

基幹システムの刷新は、多くの企業で「わかっているが動けない」課題の筆頭に挙がります。理由は単純で、現状維持のコストが見かけ上は安く映るからです。動いているシステムを止めずに保守だけ続ける判断は、その年度の稟議では最も通りやすい。しかしその積み重ねが、刷新を何年も塩漬けにします。

経済産業省が2018年のDXレポートで示した「2025年の崖」は、この構造を数字で可視化したものです。同レポートは、対策を打たなければ2025年以降に最大で年間12兆円の経済損失が生じうると試算し、その時点で稼働21年以上の基幹系システムが約6割を占め、IT人材の不足が約43万人に達すると警告しました。老朽システムを延命するほど、保守運用に人材と予算が吸われ、変革に回す原資が細っていく——それが崖の正体です。

第一の論点は、刷新の目的をコスト削減ではなく事業価値に置くことです。「保守費が高いから入れ替える」という説明は、投資対効果が保守費の範囲に閉じてしまい、役員会で優先順位が上がりません。経済産業省が2025年5月に公表したレガシーシステムモダン化委員会の総括レポートも、モダン化の起点として経営層の意識変革とITガバナンスの強化を挙げています。刷新を「守りのコスト」から「攻めの投資」へ位置づけ直すのは、情報システム部門ではなく経営の仕事です。

第二の論点は、投資の順序を全体最適で設計することです。老朽システムは複数が同時に問題化するため、要望の大きい部門から個別に手を入れると、部分最適の改修が積み重なって全体の複雑性はむしろ増します。IPAの「DX動向2025」は、日本企業に共通する課題を「内向き・部分最適」から「外向き・全体最適」への転換と表現しました。どのシステムから、どの順で、何のために刷新するのか——この投資順序の設計こそ、経営が握るべき論点です。

第三の論点は、ベンダー任せをやめ、自社に判断の軸を残すことです。長年の外部委託でシステムがブラックボックス化すると、刷新の可否も費用も相手の見積もりに委ねるほかなくなります。前述のモダン化委員会レポートも、情報システム部門の自律性と、事業部門・ベンダーとの対等な連携を有効な要素として整理しています。丸投げを続けるほど、次の刷新はさらに高くつく。この悪循環を断つ意思決定は、投資判断そのものと不可分です。

私たちはこの3つの論点を、机上のフレームとしてではなく現場の実装から導いています。当研究所はヘルスケア経営の現場で、止められない基幹業務を抱えたまま仕組みを作り替える方法論を磨いてきました。現場で検証済みのことしか提案しない——だからこそ、刷新の順序も、止めてよい機能と止められない機能の線引きも、絵に描いた計画ではなく実行可能な単位で設計します。

レガシー刷新の失敗の多くは、技術ではなく投資判断の設計で決まります。目的・順序・主導権の3点を経営が握れば、塩漬けは動き出します。自社の基幹システムをどの順で、何のために刷新すべきか。論点の整理からご一緒したい経営層の方は、ブリーフィング(https://fujii-consulting.jp/contact)でお声がけください。

出典

  1. [1]経済産業省「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」(2018年)
  2. [2]経済産業省「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」(2025年5月28日)
  3. [3]IPA(情報処理推進機構)「DX動向2025」(2025年)

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