藤井翔悟コンサルティングFUJII SHOGO CONSULTING
経営フレームワーク7分で読める

バリューチェーン分析で「儲けの構造」を可視化する — 利益の源泉を工程で見極める

自社のどの活動が利益を生み、どこがコストを食っているのか。バリューチェーン分析を「工程の羅列」で終わらせず、儲けの構造を分解し経営資源の再配分に効かせる4つの実務ポイントを、経営層向けに解説します。

多くの経営会議で「どの事業が儲かっているか」は語られますが、「事業のどの工程で儲かっているか」まで踏み込める企業は多くありません。損益計算書は事業全体の結果を示すものの、その利益がバリューチェーンのどこで生まれ、どこで削られているかは映し出しません。マイケル・ポーターが1985年の著書『競争優位の戦略』で示したバリューチェーン分析は、この盲点を埋める道具です。本稿では、このフレームワークを工程の羅列で終わらせず、儲けの構造を可視化して経営資源の再配分に効かせるための、4つの実務ポイントを示します。

ポーターの基本構造を確認しておきます。企業活動は、購買物流・製造・出荷物流・販売マーケティング・サービスという5つの主活動と、全般管理・人事・技術開発・調達という4つの支援活動に分解されます。そしてポーターは、競争優位は企業を全体として眺めても理解できず、企業が行う個々の活動から生まれると論じました。マージン(利益)とは、顧客が認める総価値から、これらの活動すべてにかかったコストを差し引いたものです。つまり儲けは、事業という塊ではなく、活動という単位に宿っています。

第一のポイントは、活動ごとにコストを割り付けることです。多くの企業は費用を勘定科目(人件費・広告費・外注費)でしか把握しておらず、それが購買・製造・販売のどの工程で発生したのかを分けていません。これでは、どの活動が付加価値に見合わないコストを抱えているかが見えない。完璧な原価計算を待つ必要はありません。まずは主要な費用を9つの活動へ概算で振り分けるだけでも、「利益を生む工程」と「コストを垂れ流す工程」の輪郭が浮かび上がります。精度より、分解の視点を持つことが先です。

第二のポイントは、コストの大きい工程ではなく、価値の源泉となる工程を見極めることです。分析を始めると、多くの現場はコスト削減の対象探しに向かいがちですが、それは守りの半分にすぎません。真に問うべきは、顧客が対価を払っている価値がどの活動から生まれているか、です。製造業でありながら利益の源泉が実はアフターサービスにあった、という発見は珍しくありません。儲けの源泉となる工程は守り・伸ばし、価値を生まない工程は削るか外に出す——この攻守の切り分けが、資源配分の判断軸になります。

第三のポイントは、自社の枠を越えて業界のバリューチェーン全体で見ることです。自社の9活動だけを眺めていると、より大きな構造の変化を見落とします。業界全体の価値連鎖のなかで、利益がどの段階(原材料・製造・流通・小売・保守)に厚く溜まっているかを描くと、自社が今どこで戦い、どこに移るべきかが見えてきます。近年、製造業が保守・運用のサービス領域へ、いわゆる川下へ軸足を移す動きが相次ぐのは、この利益プールの偏りを読んだ判断にほかなりません。バリューチェーン分析は、自社の改善だけでなく、事業ドメインの再定義にも効きます。

第四のポイントは、分析を静的な図で終わらせないことです。バリューチェーンを一度描いても、それが壁に貼られた図で終われば、意思決定は何も変わりません。私たちは、現場で検証済みのことしか提案しません。ヘルスケア経営の現場で磨いてきた、仮説を小さく実装し数字で検証する方法論を、この分析にもそのまま持ち込みます。「この工程の内製化で粗利がどれだけ動くか」を数字で試算し、決裁者・期限・投下資源まで紐づけて一つずつ検証する。図を描く作業ではなく、儲けの構造を動かす一手を選ぶ作業として扱うことが要点です。

バリューチェーン分析の価値は、フレームワークの新しさではなく、「事業」という粗い単位で語られがちな利益を、「活動」という単位まで分解して見せる視点にあります。活動ごとのコスト割り付け・価値源泉の見極め・業界全体での俯瞰・実行への接続という4つを通せば、この40年前の道具は、今も儲けの構造を可視化し資源配分の質を上げる武器として機能します。自社の利益がどの工程から生まれ、どこで削られているのか——その分解からご一緒します。当研究所では、この構造分析を実行に接続する設計を、経営層ブリーフィング( https://fujii-consulting.jp/contact )の場で提供しています。

出典

  1. [1]What Is Porter's Value Chain?(Michael Porter『Competitive Advantage』1985年に基づく解説)Mindtools
  2. [2]Porter's Value Chain(フレームワーク解説)Institute for Manufacturing, University of Cambridge

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