競合の「施術時間」を調べると集客モデルが見える — 治療院の競合リサーチで30分院と120分院の戦略の違いを読む3ステップ
競合の施術時間を調べていますか?30分院と120分院では集客しているお客さんも、広告の見せ方も、価格設計もまったく違います。藤井先生が競合リサーチ項目として挙げた「治療時間」から競合の事業設計を読み解く3ステップを解説します。

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藤井翔悟
株式会社藤井翔悟事務所 代表取締役 / 理学療法士
理学療法士として医療現場でキャリアを開始後、治療院経営で起業。自身の事業を年商10億円規模まで成長させた経験をもとに、治療院経営・ヘルスケア経営・企業変革を現場実装型で支援している。
施術時間は「何分施術するか」ではなく「どんな患者さんを選んでいるか」を示している
競合院の施術時間を確認したとき、多くの先生は「それだけ時間をかけられる」という技術の話だと受け取ります。しかし、施術時間はそれ以上のことを語っています。
30分コースを設けている院と、120分コースが主力の院とでは、狙っている患者さんの層がまったく異なります。まず、時間と価格の関係を考えてください。30分の施術を提供している院が1回3,000円であれば、1時間あたりの単価は6,000円です。一方、120分の施術が1回18,000円の院であれば、1時間あたりの単価は9,000円です。同じ施術院でも、時間単価が1.5倍違います。これは「どちらが正しいか」の問題ではなく、「どちらの患者さんにどういう価値提案をしているか」の違いです。
短時間コース(30〜45分)は、「忙しい人が気軽に来られる」という価値提案に向いています。仕事の合間にサッと施術を受けたい会社員、毎週通う習慣をつけたい高齢者、まず体験してみたいという新規患者を取り込むには有効な時間設計です。費用の負担も1回あたり低く設定しやすいため、「まず試してみたい」と思っている患者さんのハードルを下げます。広告では「駅から徒歩3分・30分コースあり」「仕事帰りに立ち寄れる」というメッセージが刺さりやすくなります。
長時間コース(90〜120分)は、「しっかり時間をとって根本から改善したい」という患者さんへの価値提案です。この時間帯で来院するのは、慢性的な悩みを長年抱えていて、「これまでの治療院では解決しなかった」という経験を持っている患者さんが多い傾向があります。1回の費用は高くなりますが、それだけの時間をとれる、費用が払えるという層に絞られます。広告では「病院でも改善しなかった方へ」「120分かけてじっくりお体をみます」というメッセージが有効です。施術時間が長いことは、患者さんにとって「本格的に向き合ってもらえる」というシグナルになります。
重要なのは、この2種類のコースを設けている院は、異なる患者さん層に向けて別々の広告を出しているということです。30分コースで来た患者さんが120分コースに移行することもあれば、はじめから120分を希望する患者さんが来ることもあります。競合院の施術時間ラインナップを調べることは、「あの院はどの患者さん層に向けて事業をしているか」を把握することに直結します。
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施術時間が短い院・長い院の集客設計の違い
「初回価格と2回目の価格の差」が示す競合の定着設計
施術時間と並んで、競合リサーチシートに記録すべきなのが「初回のオファー値段と2回目以降の価格の差」です。この差を見ると、競合院が患者さんをどうやって定着させようとしているかが分かります。
「初回のオファーの値段とか、2回目はいくらなのかっていうのも、いろいろ調べてみるんですね」と藤井先生は講義で言います。この二つの数字を記録するだけで、競合院の集客→定着の設計が見えてきます。具体的に見ていきましょう。
【パターンA:初回のみ割引・2回目から通常価格】初回980円、2回目から8,000円というような設計です。初回の割引が大きいほど、その院は「まず一度来てもらうこと」に重点を置いた集客をしています。初回のハードルを下げて来院してもらい、実際に施術を受けてもらった後に「また来たい」と思わせることで定着を狙います。広告では「初回980円でお試し」という訴求が中心になります。この設計の院と競合する場合、「初回の体験価値」を高めることが重要になります。
【パターンB:初回も通常も同じ価格】最初から8,000円で変わらないという設計です。割引なしで最初から来てもらえるだけの信頼や認知がある、または「格安お試し」に来る患者さんではなく、最初から本気で改善したいと思っている患者さんを集めたいという意図があります。この設計の院は、広告でも「価格の安さ」ではなく「技術力・改善実績・選ばれる理由」を前面に出す傾向があります。
【パターンC:初回より2回目以降の方が高い(回数券・プラン販売型)】初回は体験的な価格で来てもらい、2回目以降は回数券やコース契約を促す設計です。「初回3,000円 → 5回コース35,000円」のような形です。初回で患者さんの信頼を得て、コースに移行させることで1人あたりの単価を上げるモデルです。この設計の院は、接遇や初回のカウンセリングに力を入れている可能性が高いです。競合にこのタイプが多い場合、自院が回数券販売をしていなければ、同じ患者さんを争っても価格競争になりにくい分、別の訴求が必要です。
これらのパターンを理解しておくと、競合院のHPを見たときに「この院はどのパターンで集客しているか」がすぐに判断できるようになります。また、自院がどのパターンを採用しているかを改めて確認することで、「自院の広告メッセージは、自院の価格設計と一致しているか」もチェックできます。
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競合の初回・2回目価格パターンから読む集客設計の3タイプ
「Google広告を出している競合」を特定すると、もう一段深い分析ができる
競合リサーチシートのもう一つの重要な列は「PPCトップ」です。これはGoogle検索で有料広告として表示されている競合院を記録する列です。
藤井先生の競合リサーチシートには「PPCトップ」という列があります。PPC(Pay Per Click)とは、Googleで検索されたときに検索結果の上に表示される有料広告のことです。「整体院 ◯◯市」で検索したとき、検索結果の最上部に「広告」と書かれた院名が出てくることがあります。これがPPCトップです。
なぜこれが重要かというと、Google広告を出している院は「集客に毎月一定の費用を使っている」からです。無料のホームページを作るだけでなく、1クリックあたり数十円〜数百円の広告費を継続して払っているということは、その院にとってWeb集客は「投資対効果が出ている」か「あるいは出ると信じて試し続けている」ということです。有料広告を使っている競合は、広告に真剣に取り組んでいる可能性が高いため、特に注目すべき競合といえます。
「整体院 ◯◯市」などのキーワードで毎月Google検索をして、PPCに出てくる院の名前を記録してください。月ごとに確認することで、「先月は出ていたが今月は出ていない」(広告を止めた可能性がある)や、「先月は出ていなかったが今月から出始めた」(新たにWeb広告を始めた可能性がある)という変化をつかめます。広告を止めた院は集客に課題がある可能性があり、新たに始めた院は今後の競合として注目する必要があります。
PPCトップに出ている院は、クリックしてHPを確認することが大切です。広告に費用を使っているということは、そのHPのどこかに「成果を出せている要素」があるはずです。見出し、初回価格、施術時間、特典の設計——これらをセットで確認することで、「この院はこれだけの広告費をかけてでも、このオファーで集客している」という一貫した設計が見えてきます。有料広告を出している院のHPはとくに入念に研究する価値があります。
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「PPCトップ」競合院の確認手順
施術時間と価格帯を組み合わせて競合の集客モデルを読む3ステップ
施術時間、初回価格、2回目価格、PPC——これらを組み合わせることで、競合院の事業設計全体が見えてきます。3ステップで整理します。
【ステップ1】競合リサーチシートに「施術時間」と「初回・2回目価格」の列を追加する。すでに競合リサーチシートをお持ちの先生は、「ヘッドライン」「価格」「特典」の列に加えて、「施術時間」「初回価格」「2回目以降の価格」「PPC表示有無」の4列を追加してください。まだリサーチシートを作っていない先生は、Googleスプレッドシートに「院名・調べた日・施術時間・初回価格・2回目価格・PPC有無・ヘッドライン・特典・独自メソッド・資格」の10列を作成することを推奨します。この10列が、競合院の集客設計を読み解くための最小限の情報です。
【ステップ2】近隣5院のデータを収集して、パターンを分類する。近隣5院(または今後の主な競合と思われる院)のHPを開いて、10列のデータを記録します。施術時間については、主要コースの時間帯を書き留めます。30分・60分・90分・120分のどれが主力かを確認します。価格については、初回と2回目の価格を書き留め、差があるかどうかを確認します。5院分のデータが揃ったら、施術時間帯別・価格パターン別に分類します。「短時間・低価格・初回割引あり」「長時間・高価格・初回割引なし」のどちらの院が多いかを把握することで、地域の競合の傾向が見えてきます。
【ステップ3】自院のポジションを地図上で確認し、「空白」を探す。5院のデータをもとに、簡単な「ポジションマップ」を描いてみます。横軸を施術時間(短い〜長い)、縦軸を価格(低い〜高い)として、自院と競合院をプロットします。このマップで、競合が集中しているエリアと、空白になっているエリアが見えてきます。空白エリアに対応する患者さん層は、地域で十分に取り込まれていない可能性があります。「30分・低価格」の院が多い地域なら、「120分・中価格・重症例対応」というポジションに空きがあるかもしれません。逆に高価格・長時間の院ばかりなら、「60分・中価格・初回体験あり」に需要があるかもしれません。空白を見つけることが、自院の差別化ポジションを決める材料になります。
3ステップを通じて得られるのは「どこが空いているか」という情報です。ただし、空白があるからといって必ず自院がそこに入れるとは限りません。自院の技術レベル・接遇体制・立地・現在の患者さん層と照らし合わせて、「実現可能かつ望ましいポジション」を選ぶことが最終的な判断になります。競合リサーチは「自院をどう見せるか」を決めるための材料です。競合を知ることで、患者さんに選ばれるメッセージが決まります。
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競合の施術時間・価格帯・PPC調査の3ステップ
「競合と同じ時間・同じ価格」に揃えることが目的ではない
競合の施術時間と価格を調べると「自院も合わせなければ」と感じることがあります。しかし藤井先生の教えの核心は「真似していい」であって「全部合わせろ」ではありません。
「そこで、自分もこれちょっとやってみようかな、って思うことが出ると思うので、真似していいと思います」と藤井先生は言います。このとき「真似していい」の主語は「自分が参考にしたい要素」です。競合全体を丸ごと真似するのではなく、「この院が導入している特典のアイデアは取り入れてみよう」「このコース設計の切り口は参考になる」という部分的な吸収です。
施術時間については、競合が全員60分コースを設けているからといって、自院も60分に揃える必要はありません。自院の技術体系・施術内容・患者さんへの提供価値から考えて、最も適切な時間設計をすることが先です。競合の施術時間はあくまで「地域の標準や傾向を把握するための情報」であり、それに自院を合わせる根拠にはなりません。
特に注意が必要なのは、「競合が短時間・低価格のコースをやっているから自院も安くしなければ」という発想です。自費専門の整体院が、保険適用の接骨院と同じ価格帯・時間設計を真似しても、来てほしい患者さんは変わりません。藤井先生はある講義でこう言っています。「軽症例の安い、保険が使える接骨院と整形外科とは、根本的に来てほしい客が違うんですよね」。競合の時間設計と価格設計を知る目的は「差別化のヒントを得ること」であって、「競合に追いつくこと」ではありません。
競合が短時間・低価格に集中しているとわかったとき、むしろ「長時間・高単価」の空白があるかもしれないという発見につながります。地域の患者さんの中に「本格的に向き合ってほしい、時間をかけて改善したい」というニーズがあるのに、その需要を取り込んでいる院がないとすれば、それは自院にとってのチャンスです。競合分析は「同じことをする」ためではなく、「自院の場所を決める」ための作業です。
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競合の施術時間・価格を調べる「正しい使い方」と「間違った使い方」
施術時間・価格の変化は市場が動いているサインだ
月1回、競合の施術時間と価格を確認していると、「変わった」という変化に気づくことがあります。この変化こそ、市場が動いているサインです。
ある競合院が突然、30分コースを廃止して60分コースだけにしたとします。これは何を意味するでしょうか。短時間の患者さんよりも、じっくり時間をかける患者さんに専念することにしたかもしれません。あるいは、30分コースの患者さんが単価が低くて続けにくいと判断したかもしれません。「変化があった」という事実から、その競合院の意思決定のヒントが読み取れます。
別の競合院が、初回の体験価格を1,500円から3,000円に引き上げたとします。これは「安さで集めるよりも、最初から本気の患者さんを集めたい」という意図変更かもしれません。あるいは、原価上昇への対応かもしれません。どちらの理由であっても、「その院が初回価格を上げても問題なかった」という市場の反応が得られた場合、地域の患者さんが3,000円の初回体験に抵抗感を持っていないことを示しています。
「変わったということは、その変わったものがその地域の人に刺さっているということなので、そこから盗み出すことってたくさんできると思う」と藤井先生は言います。競合の施術時間・価格が変わったとき、単に「変わった」と記録するだけでなく、「なぜ変えたのか」「どんな効果を狙っているのか」を推測して書き留めることが大切です。推測は外れることもありますが、「変化を観察して考える習慣」が市場感覚を育てます。
このような変化を記録していくために、競合リサーチシートの「調べた日」の列が重要です。「前回調べたのはいつか」が分からないと、変化を変化として認識できません。月1回、決まった曜日に競合院のHPを確認する習慣をつけることで、半年後・1年後には「この地域の集客環境がどう変わったか」という貴重なデータが手元に残ります。
今日、1つだけやること
競合の施術時間・価格調査は、大がかりな作業である必要はありません。今日、最初の1件を記録することが出発点です。
まず「整体院 ◯◯(自院の地域名)」でGoogle検索してください。PPCに出ている院があれば、その院のHPを開きます。なければ、オーガニック検索の上位1院を選びます。HPの「料金・コース」ページを開いて、「施術時間」「初回価格」「2回目以降の価格」の3点を書き留めます。所要時間は5〜10分です。
この1件の記録を、Googleスプレッドシートまたは手元のノートに記録してください。「記録する場所」を作ることが、続ける仕組みの第一歩です。1か月後に同じ院を確認したときに「変わっているか」を比較できる状態にしておくことが、競合リサーチを一回限りの作業ではなく継続的な習慣にするための仕組みです。施術時間・価格帯・PPC有無の3点セットで記録しておくと、半年後に「あの競合は施術時間を変えた」「あの院はGoogle広告を止めた」という変化を、記録のある根拠として把握できます。こうした変化の蓄積が、地域の集客環境を読み続ける力になります。自院の集客設計を改善したい、または現在の競合環境についてより詳しく相談したい方は、経営層ブリーフィングまたはお問い合わせからご連絡ください。
まとめ
競合の「施術時間」と「初回・2回目価格」は、その院の集客モデルを教えてくれます。
施術時間が短い院は気軽さを価値提案しており、長い院は本格さと深い改善を価値提案しています。初回割引が大きい院は来院ハードルを下げる設計であり、初回から通常価格の院は技術・実績で選ばれる設計です。これらを組み合わせて近隣5院を分析すると、地域の競合環境における「空白のポジション」が見えてきます。自院がどこに入るかを決める材料になります。
PPCで広告を出している競合は特に注目です。集客に費用をかけている院のオファー設計は、地域で反応が出ている(またはその院が信じている)設計として参考になります。月1回の確認で、PPCに出る院・消える院の変化をとらえることができます。競合リサーチシートに「施術時間・初回価格・2回目価格・PPC有無・調べた日」の列を加えることで、地域の集客環境を継続して把握できる仕組みができます。競合のデータは一回だけ見て終わりにせず、定点観測し続けることで市場の変化を先読みする力になります。競合を知ることは、自院の差別化と広告訴求を強化するための入口です。
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よくある質問
競合の施術時間はどこで確認できますか?
競合院のHPの「料金・コース案内」ページに記載されていることがほとんどです。記載がない場合は、「メニュー」や「初回の流れ」のページに施術時間が書かれていることがあります。HPに明記されていない院については、Google マップの口コミに「○分コースで施術してもらいました」という記載があることもあります。HPに掲載されていない院は「施術時間を訴求のポイントにしていない院」という情報としても記録しておくといいでしょう。
「2回目以降の価格」がHPに書いていない場合はどうすれば良いですか?
HPに2回目以降の価格が明記されていない院は、「価格情報を積極的に開示していない」という点が特徴です。価格を出さない院は、来院後に対話の中で提案する設計である可能性があります。この場合、「2回目価格:非公開・要問い合わせ」として記録しておいてください。比較する際に「非公開」が多い地域では、価格を明示している自院の方が透明性で有利になる場合があります。また、実際にその院に問い合わせして確認する「体験型競合リサーチ」の対象にしてもいいでしょう。
施術時間の比較よりも、ヘッドラインや見出しの比較の方が重要ではないですか?
どちらも重要ですが、役割が違います。ヘッドラインは「患者さんへの最初のメッセージ」であり、施術時間は「その院のサービス設計」です。ヘッドラインだけ比較しても、「どんな患者さんを想定した言葉か」の背景にある設計が分かりません。施術時間と価格をセットで把握することで、「この競合院はこういう患者さんに向けて、このようなオファーを、このような言葉で提案している」という一貫した設計として理解できるようになります。個別の項目より、複数の項目を組み合わせて読む方が、競合の事業設計をより正確に把握できます。
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