「私はこれができるから売りたい」と言う治療家は9割います — 市場が求めていないところで頑張っても報われない理由と3ステップの思考転換
治療家の9割が「自分ができること・売りたいこと」から集客を考えていると藤井翔悟先生は言います。この思考が集客を止める3つのパターンと、市場が求めていることから出発する3ステップの転換法を10,000字で解説します。

AUTHOR
藤井翔悟
株式会社藤井翔悟事務所 代表取締役 / 理学療法士
理学療法士として医療現場でキャリアを開始後、治療院経営で起業。自身の事業を年商10億円規模まで成長させた経験をもとに、治療院経営・ヘルスケア経営・企業変革を現場実装型で支援している。
治療家の9割が出発点を間違えている — 2つの方向の決定的な違い
「自分ができること」から始めることと、「市場が求めていること」から始めることは、出発点が逆です。この逆転が集客の結果に大きな差をもたらします。2つの方向の違いを、具体的な場面から見ていきます。
藤井先生の勉強会で印象的なシーンがあります。受講生たちに「マーケティングで大切なことは何か」というスライドを見せて、それぞれの解釈を聞く場面です。ある受講生は「患者を先に集めるということは、まず行動するということだと思います」と答えました。別の受講生は「自分が何がしたいかというより、患者が何を求めるかということでやるということかなと思います」と答えました。さらに別の受講生は「自分が何を売りたいかじゃなくて、患者さんが求めることを先にリサーチしてから、患者さんをここだったら集められるという状態にしてスタートするということですかね」と答えました。3人がそれぞれ異なる理解を示した、この場面が非常に示唆的です。
最初の受講生の「まず行動する」は間違いではありません。しかし「何のための行動か」が明確でない場合、行動を続けても結果が出にくいことがあります。行動することと、正しい方向へ行動することは別のことです。2番目の受講生の「患者が何を求めるかでやる」は方向は正しくなっています。しかし、「自分が何を提供するかを先に考えてから、患者の求めに合わせる」という思考が混在している場合があります。3番目の受講生の理解が最も市場起点に近いものです。「患者さんが求めることを先にリサーチしてから、患者さんをここだったら集められるという状態にしてスタートする」——つまり集客とは、準備が整ったら始めるのではなく、患者が求めることをリサーチしながら始めるということです。
「できること売り」の思考は「自分の技術・知識・経験 → 商品・メニュー設計 → 集客」という流れで動きます。一見これは論理的に見えます。しかし市場起点の思考は「市場(患者が求めること・競合の状況)→ 自分が提供できる価値の設計(商品リサーチ)→ 患者の言葉を使った集客(訴求設計)」という流れで動きます。藤井先生がこう表現しています。「競合の状態と自分の商品の持っているスペック、ベネフィットと、あとはどんな訴求を自分が作っていくのかというこの3つを考えていかなければいけない」。この3要素——競合の状態・商品スペックとベネフィット・訴求設計——を考える順番が、市場起点思考の骨格です。出発点が「自分の中」か「市場の外」かという違いが、集客結果の違いを生みます。
「できること売り」が9割という藤井先生の指摘は、特定の人を批判しているわけではありません。これは、治療家として専門的に学べば学ぶほど自然と陥りやすい傾向です。技術を磨けば磨くほど「この技術を使いたい」という思いが強まります。「私にしかできないことがある」という自信は、技術者にとって正当な誇りです。しかし集客という文脈では、その誇りが「患者が何を求めているかを確認する前に、自分の答えを先に決める」という方向に向かいがちです。これが、良い技術を持っているのに集客がうまくいかない、という状況の根本にある構造です。技術が足りないのではなく、技術を市場と接続する向きが逆になっている——そう理解することが、改善の第一歩になります。
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「できること売り」vs「市場起点」— 出発点の比較
「できること売り」が集客を止める3つのパターン
「できること売り」の思考は、集客における3つの具体的な止まり方を生み出します。それぞれのパターンと、そのパターンに当てはまっているかどうかを確認する方法を見ていきます。
パターン1は「広告の訴求が患者の言葉で書かれていない」です。「骨盤矯正」「姿勢改善」「最新の施術法」は、治療家が使いやすい言葉です。しかし患者が検索するのは「腰が痛くて座っていられない」「朝起きたときに体が重い」「子育て中で肩こりがひどくて腕が上がらない」といった言葉です。自分ができることから広告を作ると、提供者の言語で書かれた広告になります。患者が感じている問題の言葉と広告の言葉がズレると、「自分に向けたメッセージではない」という感覚を患者は持ちます。広告をどれだけ工夫しても、最初の言葉のズレが解消されなければ反応率は上がりません。このパターンに当てはまっているかどうかは、「今の広告のヘッドラインは、患者が検索するときに使う言葉と同じか」という問いで確認できます。
パターン2は「メニュー構成が患者の不安を解消していない」です。治療家が「この施術法が効果的だ」と知っているメニューと、患者が「これなら安心して来院できる」と感じるメニューは、必ずしも一致しません。たとえば「独自の整体法」というメニュー名は、治療家には誇りのある表現ですが、患者には「何をされるかわからない」という不安を生むことがあります。「初回体験で何が起きるか」「どのくらい通えば良くなるか」「費用はどの程度かかるか」という患者の不安を最初に解消するメニュー設計は、患者が求めていることから設計しなければ見えてきません。このパターンに当てはまっているかどうかは、「来院前の患者が持っている不安トップ3を言えるか」という問いで確認できます。
パターン3は「競合との差別化が自分目線になっている」です。「私は理学療法士だから他の整体院と違う」「10年以上の経験があるから実力は上だ」という差別化は、治療家の立場から見た差別化です。しかし患者が来院前に比較するのは「どの院のホームページが自分の悩みに答えているか」「価格と初回体験のオファーが自分にとって試しやすいか」「口コミや患者さんの声が自分の状況に近い人からのものか」という視点です。自分目線の差別化を続けると、患者が実際に比較している軸と全く別の軸でアピールし続けることになります。競合のホームページを定期的に確認し、患者が実際に比較している項目を知ることなしに、有効な差別化は生まれません。このパターンに当てはまっているかどうかは、「近隣の競合院が打ち出しているヘッドラインと価格を3院分言えるか」という問いで確認できます。
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「できること売り」が生む3つの止まりパターンと解決の方向
3ステップで「市場が求めていること」から出発する方法
市場起点の思考に切り替えるために、今日から始められる3つのステップがあります。特別なツールも時間もいりません。それぞれのステップで何をするかを具体的に説明します。
ステップ1は「競合の状態を確認する」です。自分の地域で同じような価格帯・患者層を対象にしている院のホームページを1〜3院だけ開いて、「一番上に書いてある大きな文字(ヘッドライン)」と「初回オファーの価格」だけを確認します。これが今の市場における「患者への語りかけ方の相場」です。相場を知らずに広告を作ることは、地図なしに目的地を目指すことと同じです。競合のヘッドラインを1〜3院分見るだけで、「患者が今この地域でどんな言葉に反応しているか」の仮説が立ちます。これが競合確認の目的です——真似ることではなく、市場の言語を知ることです。所要時間は1院あたり5〜7分。今日の昼休みに1院だけ確認することから始められます。
ステップ2は「自分の商品が患者に何をもたらすかを言葉にする」です。「骨盤矯正ができる」という技術の説明ではなく、「骨盤矯正をすることで患者さんはどういう状態になれるか」という患者の変化を言葉にします。たとえば「デスクワークで腰が痛い30代の方が、1ヶ月後に子どもを抱き上げても痛くない状態になれる」という具体的なイメージです。この作業を「特徴をベネフィットに変換する」と呼びます。自分の施術・設備・経歴・性格・立地など思いつくものを50個書き出し、それぞれについて「この特徴は患者にとって何の役に立つか」を1文で書きます。この50個のリストから、患者が最も共感しやすい3つを選ぶと広告コピーの材料が揃います。まずは思いつく10個から始めて構いません。
ステップ3は「競合との比較から自分の訴求ポイントを見つける」です。ステップ1で確認した競合のヘッドラインと、ステップ2で作った「患者への変化の言葉」を並べて比較します。競合が「腰痛改善」というヘッドラインを使っている場合、自分も同じ言葉を使っても差別化になりません。競合が打ち出していない患者の変化(「産後の体型を取り戻したい30代ママへ」「デスクワークで固まった体を1時間で解放する」)を探すことで、自院が担うべき訴求ポイントが見えてきます。藤井先生が言う「自分のエリアがどういうマーケットかを分析しながら集客を意識する」という思考の具体的な実践が、このステップ3です。
この3つのステップは、一度やれば完成するものではありません。競合は常に変わり、患者の悩みも変わり、時代の変化によって響く言葉も変わります。だからこそ藤井先生は「集客というのは、一発やってすぐ成約できるというものはございません。基本的にはテストなんですね。テストして、売りとなれる可能性を検証していくということが、我々が求められていることです」と言います。3つのステップを一度やることよりも、定期的に繰り返す習慣を持つことの方が重要です。「今の自分の広告が市場の言葉と合っているか」を月1回確認するだけでも、集客スキルは着実に育ちます。
3つのステップをまとめると、ステップ1は「競合1〜3院のヘッドラインと価格を今日メモする(所要10〜20分)」、ステップ2は「自分の特徴を10個書き出し、それぞれ患者への変化として言い換える(所要30分)」、ステップ3は「競合のヘッドラインと自分のベネフィット一覧を並べ、競合が使っていない言葉を1つ見つける(所要15分)」です。この順序で進めると、合計1〜2時間で「市場と接続するための材料」が揃います。「まずステップ1だけやる」でも構いません。今日1院だけ開いてヘッドラインをメモする——その1行の記録が、市場起点の思考への入り口です。
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市場起点に立つ3ステップ — 着手前と実行後の変化
テスト思考が「できること売り」からの出口になる
3つのステップを実行しても、最初から完璧な訴求はできません。藤井先生が繰り返し言う「テスト思考」が、市場起点の思考を機能させるための最後のピースです。テスト思考とは何か、具体的に見ていきます。
「テストして、売りとなれる可能性を検証していくこと」という藤井先生の言葉の中に、重要な考え方が含まれています。テスト思考の本質は「仮説は外れるものだという前提で動く」ことです。「患者さんに対してこうしてほしいんじゃないかという仮説は、ほとんど実は外れるもの」と藤井先生は言います。これは経験が浅い人だけの話ではありません。20年のベテラン治療家でも、「きっとこういう言葉が響くはず」という直感が外れることは多いのです。仮説が外れることを前提にすると、外れたときに落ち込む必要がなくなります。「外れた」という情報が、次のテストをより精度高くする材料になるからです。
テスト思考がない場合、こんなことが起きます。チラシを作って配布する → 反応が少ない → 「チラシの紙の質が悪かったか」「配布エリアが合っていなかったか」「もっと枚数を増やせば効果が出るか」と考えて、同じ方向のまま試行錯誤を続けます。しかしテスト思考があると、こうなります。チラシを作って配布する → 反応が少ない → 「ヘッドラインの言葉が患者の検索語と合っていなかったか」「初回オファーの価格が競合と比べて高すぎたか」「ターゲットにした患者層に実際に届いていたか」という、市場との接点にある原因を探します。同じ「反応が少ない」という結果から、まったく異なる次の行動が生まれます。
藤井先生はこうも言います。「反応が低下してきたとしても、こういうことを訓練していくと、反応が低下しても改善できるようなスキルが身についてきますよ」と。テスト思考の目的は「最初から当てる」ことではありません。「当たらなかったデータを蓄積させて、次は少し当て方を変えられる」というスキルを育てることです。うまくいかなかった広告のデータ(出した言葉・反応率・ターゲット・時期)を記録して残しておくと、「この言葉は12月に出したとき反応が悪かった」「このエリアでは高齢者向けの訴求が通じなかった」というパターンが見えてきます。このパターンが次のテストをより精度高くする材料になります。
「できること売り」とテスト思考の欠如は、多くの場合セットで起きます。「私の技術には価値がある」という前提が、「なぜ反応がないのかを市場に聞く」という行動を妨げます。しかし市場起点の思考を持つと、「良い技術があっても、市場との接続の仕方が合っていなければ結果は出ない」という現実を受け入れやすくなります。結果が出ないことは技術の否定ではなく、「今の訴求の仕方が市場の言葉と合っていないだけ」という修正可能な問題として見えてきます。この視点の転換が、テスト思考を実行しやすくします。「うまくいかなかったデータを蓄積させれば、どうやって集客できるようになるかわかってくる」という言葉を、前向きに受け取れるようになったとき、市場起点の思考が本当に根づいてきたサインです。
テスト思考を実践するためのシンプルな記録ルールが1つあります。広告を出したら、その日付・使ったヘッドライン・対象エリア・反応数(問い合わせ件数・クリック数)を1行でメモしておくことです。この記録が3件・5件・10件と積み上がると、「春先は腰痛訴求が反応しやすい」「高齢者向けメッセージは土曜日の朝に反応が高い」といった自院固有のパターンが見えてきます。このパターンが、次のテストをより精度高くする地図になります。記録は難しく考える必要はありません。日付・言葉・反応数の3列だけで十分です。この3列の積み上げが、集客スキルとして身についていきます。
まとめ — 今日から始める「市場への問いかけ」
この記事でお伝えした内容を4点で整理します。
第1の要点は、治療家の9割が「できること売り」の出発点から集客を考えているという事実です。これは能力の問題ではなく、専門的に学べば学ぶほど自然と陥りやすい思考の方向性です。「市場が求めているところにしか自分たちの生存できる可能性はない」という藤井先生の言葉は、技術を否定しているのではありません。技術を市場と接続する方法を知っているかどうかが、集客結果を分けるということを言っています。
第2の要点は、「できること売り」が集客を止める3つのパターンを持つという事実です。広告の言葉が患者の検索語と合わない「訴求のズレ」、メニューが患者の不安を解消していない「不安のズレ」、差別化が患者の比較軸と合わない「比較軸のズレ」の3つです。3つのパターンはすべて「市場(患者・競合)を先に見る」習慣で解消できます。
第3の要点は、市場起点の思考への転換が「競合確認 → 特徴のベネフィット化 → 訴求の空白地帯の発見」という3ステップで始められるという事実です。今日、近隣の競合院を1院だけ開いて一番上のヘッドラインをメモすること——これが第一歩です。
第4の要点は、テスト思考がこの3ステップを継続させる基盤になるという事実です。「最初から完璧な訴求を目指す」のではなく、「小さなテストを繰り返して市場の反応を記録し続ける」スキルを育てることが、集客を長期的に安定させる道です。技術の自信と市場起点の思考は矛盾しません。技術の価値を、患者の変化として言語化し、市場の言葉でテストする——この循環が、集客スキルを育てます。
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よくある質問
「市場が求めていること」を知るための一番手軽な方法は何ですか?
最も手軽な方法は「来院している患者さんに直接聞く」ことです。「今日来る前はどんな状態でしたか?」「当院を選んでいただいた決め手は何でしたか?」「他にどこか検討しましたか?」という3つの質問を、次の患者さんに聞いてみてください。1人の答えを聞くだけで、市場が求めていることの具体的なヒントが得られます。患者さんの言葉の中に、次の広告のヘッドラインになる言葉が含まれていることが多いです。まず1人の声を聞くことから始めてください。
「競合を確認する」と言いますが、具体的に何を見ればいいですか?
最初は2つの項目だけ確認します。1つ目はヘッドライン——ホームページの一番上に表示される大きな文字です。スマートフォンで開いた時に最初に目に入るキャッチコピーです。2つ目は初回オファーの価格——初めて来院するときの料金と内容です。この2つが変わったとき、その院は患者へのアプローチを意図的に変えたということです。まずは近隣の競合院を1院だけ開いて、この2つをメモします。次の週にまた別の1院。これを繰り返すだけで、地域の市場の相場が少しずつ見えてきます。
技術への自信と「市場起点の思考」は矛盾しますか?
矛盾しません。技術への自信は集客における重要な資産です。ただし、その技術が患者の抱えている問題に対してどう答えられるか、という言語化が必要です。「私の骨盤矯正技術は高い」という自信を、「デスクワークで腰が痛い30代の方が、1ヶ月後に子どもを抱き上げても痛くない状態になれる」という患者の変化として言語化すると、技術の価値が患者に届く言葉になります。技術の自信を「できること売り」のままにしておくのではなく、患者への変化として翻訳することが市場起点思考の実践です。
3つのステップを一度やったのに集客が変わりませんでした。なぜですか?
3つのステップは一度やって完成するものではなく、繰り返すことで精度が上がるものです。競合は変わり、患者層は変わり、響く言葉は時代とともに変わります。「やったけど変わらなかった」という状況の多くは、最初のステップが一度きりで止まっていることから起きています。月に一度、「今の自分の広告のヘッドラインは今の市場の言葉と合っているか?」という問いを立てて、競合1院と患者1人の言葉を確認する習慣を持つことが、継続的な集客改善につながります。
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